





若いスタッフにいつも言っているのは、「身につけたものはなくならないよ」ということ。お金や不動産は、一歩間違えば失うこともあるけれど、感性、美意識、教養といった無形の財産はなくならないですから、もっとも強力と言えるんじゃないでしょうか。
うちには制服はなく、私服で、いつもおしゃれにしてきて、とスタッフに言っています。本もどんどん買っていいよ、と言っていますし、休みの日もおいしいものを食べにいくとか、きれいな景色を見るとかして感性を磨いてほしい。それも大切な仕事だから、と伝えています。
会社にとって人は宝物。私がスタッフに投資するかわり、スタッフも自分自身に投資してほしい。そうして培ったものが家づくりに発揮され、お客様の喜びがスタッフの喜びとなることが私の理想です。みんな幸せ、こんなに嬉しいことはありませんよね。

私達を鍛えてくれる最高の存在、それがお客様です。たとえばお客様が「かわいい雰囲気にしてほしい」とおっしゃった時に、「かわいい」に対するひきだしが一つしかなければ、それがお客様のおっしゃっている「かわいさ」に合致しない場合は、そこで終わりです。
何をもって「かわいい雰囲気」とおっしゃっているかを知るには、「かわいさ」とは何かを日頃から考え、様々な「かわいさ」を知っていなくてはなりません。これはお客様との真剣勝負。真剣勝負だからこそ、やり遂げた時の成長は大きいのです。
ですから、私はお客様に遠慮せずに、どんどん要望をおっしゃっていただきたいと思っています。お客様の中には、要望を言えば言うほど、予算が高くなると思っていらっしゃる方もおられるかもしれませんが(笑)、そんなことはありません。 私達が何の策も持たず、ただお客様の言いなりになっていれば、それは予算も上がるかもしれませんが、そこで私達が踏ん張って、予算内での提案ができればいいのですから。この提案力こそ、私が若いスタッフに身につけてほしいと願っているものなのです。

会社を大きくしたいとか、事業を広げたいという欲は、私には全くありません。けれど、感性の豊かな社員を育てたいという気持ちは、とても強く持っています。
なぜなら、ものをつくるのは人だから。まず自分自身が人生を楽しんでいて、いろんなものに対して好奇心旺盛で、美しいものが大好き、というスタッフだからこそ、お客様が求める世界に対してビビッドに、かつ繊細に反応できると思うのです。 だから、そこそこに仕事をしていたいという人は、スペースラボでは不採用(笑)。反対に、あれもしたい、これもしたいと目をランランと輝かせている人の望みは、できる限り叶えるのが、社長である私の仕事だと思っています。建築物を見るために皆で海外に出かけたり、音楽好きの社員がサックスに挑戦するのを応援したり、美味しいものを食べに行ったり。少人数で家庭的なスペースラボの利点を活かして、それぞれが個性を伸ばせるような環境をつくっていきたいと思っています。
建築という仕事は知れば知るほど奥が深く、涸れることのない泉のように、常に清冽な魅力に満ちています。美しいもの、五感に訴えるものを求め続けていけるこの仕事に就けたことに、いま私は 心から感謝しています。
